こんにちは。時短父さんです。

株式投資で資産運用する人の目的はそれぞれですが、投資で定期的なインカムを欲する人にとって、配当は非常に重要なものです。それ故に、配当を貰うことそのものを目的にしている人もいます。

私は当初そのような状態でしたが、株式投資を数年続けてきて、それは誤りだと気付きました。株式投資は基本的には企業価値を向上させる行為で、それは株価に反映されます。保有する株式の価値の上昇によって、投資家の資産を増やす行為です。

企業価値を向上させる重要な要素は、利益だったり、成長見込みだったり、ブランドだったり、配当だったりします。投資家はこれらを材料に企業価値を判断して、投資を行います。つまり配当は企業価値を向上させる要素の一つではあるものの、それだけではないのです。

ある証券会社のサイトで、配当の意味を調べてみると、こう書いてあります。「配当とは、企業が株主に利益を分配することをいい、株主が保有する株数に比例して分配されます」と。

確かに一般的にはこのような理解で良いのでしょう。配当=利益が分配されたもの、と。売上があって、そこから費用や税金を差し引いて、最終的に残ったのが利益です。これを企業の所有者である株主に分配するものが配当です。

だから「配当=利益の分配」なのです。

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でも本当にそうですかね?

利益って目に見えません。損益計算書(P/L)の数字上は、確かに利益とか損失とか表示されていますが、具体的にモノ・現物として手にできません。あくまで紙の上での話です。目に見えないモノ、手に出来ないモノをどうやって分配するのよ?どうやって受け取るのよ?

読者の皆さんの多くは実際に投資をやられているから分かると思いますが、四半期に一回配当を受け取る時、何を受け取りますか?利益ですか?(笑)

(電子的な)現金ですよね。

企業は株主に現金(キャッシュ)を分配しています。利益があっても、企業に現金がないと、株主に分配できません。逆を言えば、利益がなくても、現金があれば、配当を出せます。

じゃ、企業に現金があるか?、どれだけ現金あるか?を調べるにはどうしたらいいですか?

一つは貸借対照表(B/S)の最上段を見てもいいと思います。ある時点で、企業が保有する現金・現金同等物の額が分かります。でも、もしかしたら、この現金は銀行から借り入れてきたモノかもしれません。それだったら自分たちのビジネスで稼いで貯めた現金とは言えませんから、積極的に投資したいと思いませんよね。

もう一つの方法は、キャッシュフロー(CF)計算書を見ることです。これなら、現金の動きが分かります。自分たちのビジネスで稼いできたものなのか(営業CF)、資産売却によって生まれた一時的なものなのか(投資CF)、銀行から借りてきたものなのか(財務CF)、などです。

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配当を十分に出せる余裕があるかどうかを判断するポイントは、このキャッシュフローです。特に、営業CFと投資CF(厳密に言えば、事業継続に必要な設備投資額である投資支出(Capital Expenditure))との差額である、フリーキャッシュフロー(フリーCF)の額がどうなっているかを見ることです。

フリーCFは文字通り企業が自由に使える現金で、これが配当の原資になります。

営業CFが投資支出を上回っていれば、当然フリーCFはプラスであり、自由に使える現金が残っていることを意味します。営業CFが100で、投資支出が30なら、フリーCFは70です。

逆に、営業CFが投資支出を下回っていればフリーCFはマイナスです。自由に使える現金はないのです。

基本的に配当を出している企業の多くは、このフリーCFがプラスを維持しています。フリーCFがマイナスの企業への配当目的の投資は避けるようにしましょう。

さらに言えば、現行配当を出している企業は、その配当がフリーCFのどれくらいの比率を占めているか?(配当性向)を見るようにして下さい。

フリーCFが70に対して、配当が35であれば、配当性向は50%です。この企業が、次回以降配当を増やすのは簡単ですね。

フリーCFが70に対して、配当が70であれば、配当性向は100%です。配当支払後のキャッシュはゼロです。配当性向100%の企業が、次回以降配当を増やそうと思ったら、フリーCFを増やすしかありません。

もしフリーCFが減ってしまったら(確実に増えるなんて保証はない)、原則的には配当を減らさざるを得ません。

じゃ、配当性向が何%だったら、安全か?ですが、Oxfordクラブのマーク・リクテンフェルド氏によれば、通常期は75%が一つの目安だそうです(コロナ禍では50%)。私も70%前後くらいが適当だと思っています。

超優良企業のプロクター&ギャンブル(PG)のFY2021の営業CFは183.7億ドル、投資支出は27.8億ドルでしたので、フリーCFは155.8億ドルです。配当は82.6億ドルでしたから、配当性向は53%です。

同社は近年配当の増加よりも、大きいペースでフリーCFが増加しているので、配当性向は減少傾向にあり、増配余地が大きくなっています。
PG FCF 配当性向


配当株投資は楽しいのです。大きな株価の値上がりは期待できないものの、定期的なインカムが入ってくるので、楽しみが増えるからです。でも、配当株投資で注意しなければならないのは、極端に高い配当利回りと、この現金をベースにした配当性向です。

せっかく選んで投資した企業が配当を増やさなくなったり、配当を減らしてしまったりしたら、見込み収益が得られなくなり、がっかりしますね。投資した意味がなくってしまいます。

配当株投資をする際は、現金の出入り(フロー)と、配当性向に目を向けるようにして下さい。

楽しい投資生活を。
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「年100回配当」投資術ー日本人が知らない秘密の収入源
マーク リクテンフェルド
APJ Media
2020-06-18