こんにちは。時短父さんです。

コロナ禍で多くの業界が逆風に晒された2020年。最も影響を受けた業界の一つが航空業界だったと思います。各国が入国を条件を厳格にし、人の移動が制限され、人々も移動を恐れたことで、世界中の航空会社の多くが莫大な損失を被りました。

国内航空ではANAホールディングス(以下、ANA)はFY2020、過去最大の最終赤字4046億円を計上、売上高は前年比1.2兆円も減少しました。日本航空(以下、JAL)も売上高が65%減、純損失2866億円を計上しました。

そんな中でも各社は雇用を維持しながらも、賃金カット、社外出向、設備投資の抑制、機材売却、生産量調整などを通じてコスト削減に取り組み、需要回復期まで何とか生き延びようとやっています。おかげでANAはFY2020に合計5900億円のコスト削減を達成しています。

FY2020に散々な目に会ったANAは、今年かなり強気に出ています。FY2020の決算説明会資料によれば、FY2021の業績予想では、売上高は1兆3800億円(前年比89%増)、FY2021に最終黒字35億円を達成することを内外に発表しています。JALは通期予想を出していません。

ANAは本当に今年(FY2021)、黒字を達成することができるでしょうか?

私はやや懐疑的です。そもそも航空需要が昨年の2倍近くも戻ってくることが楽観的過ぎると思うのですが、それよりも営業費用の2割近くを占める燃油費(FY2019=18.6%)です。

先ほどの決算説明会資料で、ANAはFY2021の前提としてドバイ原油価格を1バレル=60USドル、実際の航空燃料であるシンガポールケロシン価格を同=US65ドルと設定しています。FY2019の実績では前者が44.6ドル、後者が45.8ドルだったので、原油価格の上昇を受けて現状に即した、かなり高めの設定だということは分かります。
ANA

ただ、その現状はもっと早いスピードで進んでいます。ドバイ原油ではありませんが、WTI原油価格は73.54ドルを付けました。ANAの前提である原油価格水準を超えています。

WTIチャート

ちなみに、ANAは為替レートの前提を1ドル=105円としていますが、現在は110円ですね。商品価格が上がり、日本円が値下がりすれば、同社のキャッシュは想定以上に流れ出て行くことになります。

さらに悪いニュースとして(世界的には景気回復期待という良いニュースと捉えられる場合もある)、バンク・オブ・アメリカのアナリストは、「大量の繰り越し原油需要が解き放たれる準備は整っている」として、原油相場は来年1バレル=100ドルに到達するとしています。

またOxfordクラブのトレンド・ストラテジストのマシュー・カー氏によれば、「ゴールドマンサックス (NYSE: GS) は、原油価格市場の国際指標である「北海ブレント原油先物」が、7 -9月期までに1バレルあたり75ドルに達すると予測しています。また、投資銀行のパイパー・サンドラーは、ブレント原油は2021年末までに1バレルあたり100ドルを超えると予測」しているとのこと。

いずれにしても、まだFY2021が始まって3ヵ月しか経っていないのですが、原油価格はANAの利益算出の前提を大きく上回ってしまっているのです。そしてこれは当面下がることはない。

恐らく何等かのヘッジを使って、ある程度抑制された価格で燃料を調達してくるとは思いますが、それでも60ドルを下回るとは考えにくいと思います。

原油価格が100ドルに行ってしまえば、目標35億円なんて軽く吹き飛んでしまうでしょう。本格的な回復までは前途は多難です。


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2015-12-14