こんにちは。時短父さんです。

最近、製薬メーカーのアッヴィ(ABBV)の記事を見る機会が複数回ありました。一つはOxfordクラブのメルマガで、チーフインカムストラテジストのマーク・リクテンフェルド氏が『この年4.8%配当利回り株の増配はあるのか?』という記事で、もう一つはモトリーフール(米国版)が21日に配信した『3 Embarrassingly Cheap Dividend Stocks』のなかにアッヴィが登場していました。

どちらも共通しているのは、配当利回りが高く、割安なアッヴィは配当株としてお勧めだよ的な内容でした。

ただ本当にそうなのか?少し自分でもアッヴィについて確かめてみることにしました。

一つ目のマークさん記事では、インカムストラテジストらしく、フリーキャッシュフローに注目しています。記事によれば、アッヴィのフリーキャッシュフローは2018年の127.9億ドルから、2019年は127.7億ドルとわずかに減少し、「セーフティネットのプロは、どんなに小さな額でもフリー・キャッシュフローの減少を嫌」うようです。

ただ2020年は167.9億ドルのフリーキャッシュフローを稼いでおり、19年比で30%も増加しました。配当支払額は77億ドルでしたから、配当性向は46%でした。マークさんは配当性向が「50%未満であれば非常に安全だとみな」しています。

これだけ聞くと素晴らしいように思えます。私が調べた限り30%もフリーキャッシュフローが伸びたのは営業キャッシュフローが175.8億ドルで32%増加したことが要因です。

でも営業キャッシュフローが3割も伸びるなんて何かあるはずです。そうアッヴィは20年5月に同業のアラガンを買収しています。これによって営業キャッシュフローが伸びたのだと思います。

買収だからそれなりに投資をしているはずですね。アッヴィの年次報告書によると、アラガン買収には397億ドルも使っています。397億ドル!!先ほど2020年のフリーキャッシュフローは167.9億ドルと書きましたが、これをはるかに超える投資額です。

そうです。マークさんのフリーキャッシュフローの計算は、投資キャッシュフローを事業継続に必要な投資額(Acquisitions of property and equipment)のみで行っている(一時的な支出は含まない)ために、アラガン買収金額は含んでいないのです。

マークさんの計算方法では、2013年にアボット・ラボラトリーズからのスピンオフ以降、フリーキャッシュフローと配当支払額の推移は以下のようになっています。
フリーCF推移

2019年は前年比でわずかにフリーキャッシュフローが減少したものの、2020年は大きく増加したことが良く分かります。

ただネット(純収支)ベースでキャッシュフローを見ると、以下のように投資キャッシュフローが大きく下に突き抜ける年が複数年あり、フリーキャッシュフローがマイナスになっていることが分かります。
CF推移

個人的にはネットベースであっても、フリーキャッシュフローがマイナスになるのは、あまり良い印象は持ちません。それにどうしてマイナスになったのに、配当を支払えたのでしょう?

それは前年の財務キャッシュフローを見ると分かります。アッヴィは2019年に314億ドルの長期的な借り入れを行っていて、ほぼそれをアラガン買収に充てたと推測できます。なので、フリーキャッシュフローを上回る買収案件も実行でき、かつ配当も支払えたわけです。


もう一つのモトリーフールの記事では、最近の配当利回りが5%あって、最もお買い得な配当株の一つだと推奨しています。何がお買い得かって、アッヴィの株価収益率(PER)が8.5倍で推移しているのだそう。

本当かな?と思って、「Abbv 株価」とググってみたら、出てきました。
株価

確かに配当利回りは5%ありますね。でも、あれ?株価収益率は37倍となっています。8.5倍なんて全然違いますね。割安株というよりも、むしろめちゃめちゃ割高のような印象です。

さぁ、これはどういうことでしょう?アッヴィの年次報告書では、2020年の希薄化後の一株利益は2.72ドルとなっています(2020 Form 10-K 49頁)。しかし、これは報告ベースです。調整後のnon-GAAPでは、買収費用などが除外されていますから、その一株利益は、なんと10.56ドルもあったのです。

2.72ドルと10.56ドルじゃ、全然違いますね。先週末の株価でそれぞれを割ってみると、前者は9.8倍、後者は37.8倍となります。8.5倍と9.8倍では、まぁ誤差の範囲かな。PERが10倍未満であれば、割安株と言っても過言はないでしょう。

モトリーフールの記事では、アッヴィ株が放置されている理由は、人気医薬品ヒュミラが米国での独占販売権を2023年に失うことを投資家が懸念しているからだとしています。このヒュミラはアッヴィの総収入の37%を占めています。

しかし、他にも強力な成長ドライバーとなり得る製品(リンヴォックやスキリージなど)を保有しています。2023年に収入は落ち込むだろうと予測していますが、翌年以降は持ち直す見込みです。今後10年間は1桁台の後半の成長をするだろうと、アッヴィ自身が予想しています。


なるほど。どちらの記事もアッヴィ株を推す内容でした。マークさんはフリーキャッシュフローが増えたから配当は安全だと言い、モトリーフールは調整後EPSからPERは割安だと判断しています。さて、あなたはどう思いますか?

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マーク リクテンフェルド
APJ Media
2020-06-18