こんにちは。時短父さんです。

国内航空大手のANAホールディングス(以下、ANA)は、来年度入社の採用活動を中止すると発表しました。これまでは、「中断」としていましたが、航空需要の回復が遅れるのは必至で、正式に採用を取り止める決定となりました。

人材不足が懸念されるパイロットや法定要件のある障害者雇用は継続するようです。グループ全体で当初3200人だった採用予定は、2500人削減されることになります。


まぁ、当然といえば当然の対応です。現在、航空会社に新規で人を採用する財政的な余裕はありません。従業員の賞与は大幅カットした上に、国から給付金を貰う立場ですからね。

ANAの経営陣の本音では、若い(潜在的な)戦力は喉から手が出るほど欲しいはずです。何故なら、航空会社の事業構造として、人は財だからです。航空産業は労働集約産業であって、人なしには成り立たないのです。一昔前に比べて空港ロビーの自動化は進みましたが、機内は未だにマンパワーに依存しています。

また、もしライバルの日本航空(JAL)が採用を続けたら、優秀な人材が流れてしまいます。航空業界を目指す学生は、翼の色はあまり気にしないでしょうから。ちなみに現時点でJALは採用活動の中止を決めていません。

それに一般的に若い人材はコストを抑えられます。一人前に育成するためのコストは掛かるものの、固定費抑制に貢献できます。希望退職でも募り、中堅・ベテランを減らしたら、もっと効果はあるのに。

海外の航空会社に目を向ければ、エールフランスは7500人、ルフトハンザ航空は2万2000人を削減(または削減を検討)すると発表済みです。米国航空会社も、政府から財政支援を受けているから、まだ解雇はしていないだけで、約束である秋以降に順次人員削減が行われるでしょう。しかも万単位で。

なのに、何故採用中止を決めたのか?

それはANAホールディングスのCEOが「雇用は守る」と断言してしまったことが根底にあるでしょう。

経営危機の時に人員を削減して、無駄な固定費を減らすのは、王道です。先ほども書いたように、海外航空会社は数千人規模、数万人規模で、既に人員削減に取り掛かっています。

しかし、ANAの経営者は「雇用は守る」と断言しました。そのため社内で希望退職、早期退職を募れなくなりました。現在の雇用を守り、新たな採用は見送られることで、人材の流動性を自ら放棄し、固定費が高いままを維持する選択をしたのです。

経営者にも言い分はあります。航空会社は人材が生命線であるが故、従業員に安心して働いてもらう必要があるからです。安心して働けなければ、航空機の安全運航にも支障を来しかねません。

ここにANAのジレンマを見ることができます。様々な理由から、採用は続けて将来の人材を確保したい。しかし、安全運航の観点から、現在の人材を疎かにするわけにもいかない。

ANAが再び大きく飛び上がれる日は来るでしょうか?経営者の賢明な決断が、今後も求められます。


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