こんにちは。時短父さんです。

ANAホールディングス(以下、ANAHD)は28日、日本政策投資銀行から最大3,500億円の借入をすることを発表しました。6月29日までに借り入れを行い、返済期間は「長期」としています。これは、新型コロナで航空需要が激減したことで、当面の資金繰りを行うためです。ANAHDが新型コロナを理由とした借入を、会社として正式に発表するのは、これが初めてです。

ANAHDは他にも、民間金融機関からの多額の借入を検討しているとの報道もあり、手元資金の流動性を確保するために必死になっている様子が伺えます。そうですよね。毎月1,000億円ものキャッシュが流出しているらしいです。ニュースなんかで聞く限りでしかなかったのですが、実際に1,000億円も出ているのか疑問になってしまったので、調べてみました。

結論から言うと、確かに1,000億円はキャッシュアウトしていました。

でもいったい何にそんなにお金が掛かるのでしょうかね?

人件費かな。例えば毎月給与として50万円(あり得ないけど)を、グループ社員43,666人(2019年3月)に支払ったとしたら、約218億円です。


ANAHDの2020年3月期(FY2019)の決算発表資料を確認すると、セグメント別の経営成績が載っています。そこに航空事業の詳しい営業費用の内訳がありました。

燃油費・燃料税 3,144億円
空港使用料 1,201億円
航空機材賃借費(※リース代) 1,306億円
減価償却費 1,682億円
整備部品・外注費 1,773億円
人件費 2,016億円
販売費 1,051億円
外部委託費 2,566億円
その他 2,138億円
営業費用合計(航空事業) 16,881億円

ANA営業費用内訳

これは国内・国際・貨物の航空事業のみの数字であって、航空関連事業や商社事業などを連結にすると、1兆9100億円まで膨らみます。

わかりやすいように航空事業だけで話を進めますが、航空機を飛ばすのに、年間1兆6,881億円も営業費用が掛かっているのです。

でもこれを単純に12ヵ月で割るのは、正しくはありませんね。減価償却費は、実際にはキャッシュアウトしない費用です。これ以外は、基本的にキャッシュフローベースの費用と見ていいです。そうすると、1兆6,881億円から減価償却費1,682億円を引いて、12ヵ月で割ると、毎月キャッシュアウトする額が分かります。

計算結果は1,226億円。

1,000億円より多いじゃないですか!!しかもここには、8,428億円にものぼる有利子負債に掛かる支払利息(年間で63億円だけど)は含まれていません。

財務活動によるキャッシュフローを見ると、年間で長期借入金の返済で820億円の支出、社債返還で300億円、配当金の支払いで250億円(FY2018分)となっています。

とにかく、毎月1000億円は軽くキャッシュが流出していることが分かると思います。航空事業だけで。報道は本当でした。


で、ANAHDはどんな対策をするかというと、

費用の削減策として・・・
一時帰休制度の導入と拡充、空港運営体制の見直し、機内サービスの変更、役員報酬・管理職給与の減額、航空機の受領後ろ倒しによる機材関連費用の圧縮、海外整備委託の内製化による外部委託費の削減など

手元資金の確保として・・・
間接金融を中心とした借入の実行、設備投資の抑制(航空機受領後ろ倒しやIT投資の先送りなど)を行い、

事業会社ANAの平子社長が会長を務める定期航空協会として・・・
空港使用料や航空機燃料税の減免、支払い猶予の要請

を行う、または既に行っています。

国内では緊急事態宣言が全面的に解除され、空港にも人が少しずつ戻ったような印象があります。夏場にかけて航空需要は緩やかに回復すると思いますが、第2波を心配しながらの不安定な飛行となることは間違いなさそうです。


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