こんにちは。時短父さんです。

たばこ株はインカム投資家にとって、根強い支持のある銘柄です。それは何といっても魅力的な配当利回りです。たばこ株は、消費者の健康志向や当局からの規制により常に逆風が吹いており、一般的な投資家からは人気のない投資先です。そのため株価は大きく上昇することはありません。なのに、毎年増配を繰り返してくれているので、配当利回りはグングン上昇してしまうのです。

たばこ株の代表銘柄はフィリップ・モリスインターナショナル(PM)、アルトリア・グループ(MO)、ブリティッシュ・アメリカンタバコ(BTI)、そして日本たばこ産業(JT)です。

5月6日現在の各銘柄の配当利回りは、以下のように異常なまで高まっています。
PM 6.48%
MO 9.13%
BTI 7.06%
JT 7.77%

配当利回りが高過ぎるのは、一般的には株式投資として注意すべきことの一つではあります。何故なら、投資家から人気がない(事業・収益の将来性が悲観されている)からですね。ただ、たばこ株に関しては、それが当てはまらない可能性もあります。喫煙の中毒性によって、たばこを止めるのは難しいからです。それにたばこ会社は規制をかいくぐるのがうまい(是非は別にして)。そのため、急激な収益悪化というのは少なくともないと思われます。

前置きが長くなりました。そんなたばこ株について、今回はフィリップ・モリスとアルトリア・グループのキャッシュフローを比較してみたいと思います。配当は継続的に支払われるのか?インカム投資家としてはキャッシュフローをチェックしておく必要があります。2008年までは同じ会社だった2社ですが、その後の成績はどうだったのでしょうか?気になるところですね。

初めに両社のキャッシュフローの推移を確認します。
営業CFは「営業活動によるキャッシュフロー」、投資支出は事業継続に必要な支出である「Capital Expenditures」(※事業取得・売却は含まない)、フリーCFは営業CFから投資支出を引いたものです。

フィリップ・モリスの推移です。

PM CF

フィリップ・モリスの営業CFは80億ドルから100億ドルの間で推移しています。営業CFの伸び率は、平均で3.2%、中央値で6.4%となっています。2009年から2019年の伸び率は28.0%でした。増減繰り返しながらも着実に伸びていますね。

投資支出は7億ドルから15億ドル程度に抑えられています。営業CFに対して、それほど大きな投資は行っていない模様です(以下詳しく見ます)。

次にアルトリアの推移です。

MO CF

アルトリアの営業CFは、2017年まで30億ドルから60億ドルの間で推移していましたが、2018年に電子たばこ会社JUULの買収を行い、営業CFが一気に80億ドル前後まで増加しました。営業CFの伸び率は、平均で12.1%、中央値で10.1%です。2009年から2019年の伸び率は128%となり、フィリップ・モリスを凌駕しています。

2016年に落ち込んでいるのは、AB InBev/SAB Miller社を企業結合したことによる営業CFの減少が138億ドルあったためです。

投資支出は2億ドル前後しか出ていません。そのため営業CFのほとんどが会社に残る計算です。ただし、アルトリアは2009年に嗅ぎタバコと噛みタバコメーカーのUST LLCを102億ドルで、2018年にJUULを128億ドルで取得しています。2009年と2018年はフリーCFは大きくマイナスになっています。


では、両社のキャッシュフロー指標を比較してみましょう。

①営業キャッシュフロー(CF)マージン
営業CFマージンは、営業CFを売上高で割った数値です。CFベースの営業利益のようなもので、売上高に対してどれだけ効率的にキャッシュを取り込めているかを計ります。

営業CFマージン

フィリップ・モリスの営業CFマージンは25%~35%で推移しています。期間の平均は31%、中央値も31%です。安定してキャッシュを稼ぐことができています。2015年から緩やかに上昇しています。

一方でアルトリアの営業CFマージンは10%~30%で推移しています。期間の平均は17%、中央値は15%です。グラフは右肩上がりとなっていて、JUUL買収で勢いが付いたようにも見えます。2009年(15%)から2019年(26%)で80%上昇しました。

今のところは、フィリップ・モリスが効率的にキャッシュを稼いでいるようですが、両社の差は徐々に縮まっていることに注目しておいた方が良さそうです。

②事業投資営業CF比率
事業投資営業CF比率は、投資支出を営業CFで割った比率です。事業を通じて稼いだキャッシュをどの程度、事業の維持・継続のために毎年投資しているかを計ります。数値が高ければ投資に積極的(または投資が必要)、低ければ投資に消極的(または投資がほとんど不要)と判断できます。

事業投資営業CF比率

フィリップ・モリスの期間平均は12%、中央値も12%でした。営業CFのうち1割ちょっとを投資に向ければ、事業継続が可能ということです。逆を言えば、営業CFのうち9割弱が手元に残る・・・

アルトリアはもっと凄いですね。平均はたったの4%、中央値も3%です。営業CFのうち9割以上が手元に残るのです。

参考までに、たばこ会社と同様に高配当銘柄の通信会社2社(AT&Tとベライゾン)は、事業投資営業CFは50%前後でしたし、飲料や菓子メーカーのコカ・コーラとペプシコは24%~30%でした。たばこ会社の投資支出の低さが際立ちます。

③1株あたり営業CF
1株あたり営業CFは、営業CFを発行済みの普通株式で割った数値です。これは株主価値を計る指標として有用ですね。キャッシュフローベースの1株利益みたいなものです。発行済みの普通株式数は各社のアニュアルレポート(10K)から確認しました。

1株当たり営業CF

フィリップ・モリスの1株あたり営業CFは増加傾向にあります。平均で5.55ドル、中央値で5.72ドル、2009年(4.19ドル)から2019年(6.49ドル)で55%増加しました。

アルトリアの1株あたり営業CFも増加傾向にあります。平均で2.50ドル、中央値で2.20ドル、2009年(1.66ドル)から2019年(4.22ドル)で155%増加(2.5倍)しました。

営業CFマージン同様に両社の差が少しずつ縮まっているようです。

④CFベース配当性向
CFベース配当性向は、配当総額をフリーCFで割った比率です。100%未満なら手元に残ったキャッシュで配当を賄えていると判断できますが、100%以上だと手元に残ったキャッシュで配当を賄えない(配当のために借金している?)と判断できます。

CFベース配当性向

フィリップ・モリスはもともと50%~60%近辺で推移していましたね。2014年~2016年頃までは、営業CFの低迷とともに、数値が90%を超えるまでに上昇しました。2019年は77.5%まで低下しています。平均で74%、中央値で78%となっています。

アルトリアはフィリップ・モリスをスピンオフして以降、数値が高い傾向が続いていました。徐々にフリーCFを伸ばしてきたことで、数値を低下させています。2016年が急上昇しているのは、営業CFの急減によるものです(理由はアルトリアのCF推移で述べた通り)。アルトリアは、平均で91%、中央値で86%となっています。


いかがでしたか?両社とも高配当株でインカム投資家にとって魅力的な銘柄ですが、その配当の原資となるキャッシュフローには違いも見えてきました。営業CFマージン、1株あたり営業CFについては、フィリップ・モリスが優秀だったように感じます。事業投資営業CF比率については、アルトリアの低さが際立ちました。CFベース配当性向は、両社ともやや高めだというのは否めません。

皆さんにとってはどちらが魅力的に映りましたか?個人的は、巨額の買収も不要で、各種指標に安定感のあるフィリップ・モリスで十分かなと思いました。


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