こんにちは。時短父さんです。
日本政府は、数年をめどに紙幣に描かれている肖像画を刷新する検討に入りました。報道によれば、1万円札は現行の福沢諭吉から渋沢栄一へ、5千円札は樋口一葉から津田梅子へ、千円札は野口英世から北里柴三郎へと変更になるそうです。
私のなかで肖像画のイメージが強いのは、福沢諭吉、新渡戸稲造、夏目漱石の3人です。樋口一葉の5千円札はあまり目にした記憶がありません。
さて今回の肖像画案で興味深いのは、5千円の女性→女性の変更と、千円の医者→医学者の変更ですかね。
政府は女性活躍社会を謳っていますから、なんとか維持したかったんだと思います。
医(学)者というのは何故でしょうね?参議院選を前にして、与党の支持基盤である医師会を意識したのでしょうか?
更に興味深いのは、最近の肖像画には文化人(学者、作家、医者)の起用が多いことです。
紙幣肖像画は、その発行主体である国家の顔となる人物です。対外的には国家の第一印象を与え、対内的には国威発揚の意味があります。
アメリカドルにはワシントンやジェファーソン、ハミルトン、フランクリンが、中国の人民元には毛沢東が、インドのルピーにはマハトラ・ガンジーが、イギリスのポンドや英連邦諸国のドルにはエリザベス女王がいます。それぞれ、国の顔って感じがします。
いずれも政治家や指導的な立場にあった人物で、世界的にも名が知られている人物を据えており、国民国家の統合の象徴として見ることができます。
それが日本では一作家だったり、一医者だったりするわけで、なんとも小粒というか、そんな印象を受けます。
日本でもこれまで聖徳太子や伊藤博文、岩倉具視、板垣退助、高橋是清など、歴史の教科書に出てくる指導者、政治家を肖像画に採用していことがあります。ですが、今では指導的な立場(国家全体を指導するという意味で)にいた人物は一人もいません。
アメリカ合衆国独立のワシントンやハミルトンのように、国家をまとめ上げた人物が日本にあまりいないからなのかもしれません。日本を作ったと言える人物を簡単に想像できますか?いわゆるヒーローがいないんですね。逆を言えば、国家の歴史が長いので色々な人が少しずつ関わって作り上げた国が日本だからです。
また文化人を貨幣肖像画に採用できるのは、ある意味では日本社会が平和だということの裏返しです。国威発揚に一番効くのは、戦争に勝ったリーダーを据えることです。生憎、日本は戦争をしませんし、直近の戦争には負けました。経済分野でも勝っているとは言えません。
ヒーローがいないのを嘆くのか、日本が平和であることを喜ぶのか、感じ方は人それぞれです。一つ言えるは、肖像画はその時代を写しているということです。
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