こんにちは。時短父さんです。

学生を対象にした就職したい企業ランキングで、いつも上位にいる国内大手の航空会社。学生はイメージで会社を選ぶ傾向がありますから、華やかなイメージがある航空会社に就職したがるのは、わからなくもないです。
しかし、投資家の立場からすれば、航空会社はハイリスクな割にリターンが低くいのが特徴で、手を出してはいけない部類に入ります。

利益率が低い
航空会社全般に言えることですが、株主リターンが低い最大の要因の一つが、利益率が低いということ。
利益率とは、会社全体の売上高に対する営業利益や当期純利益の割合のことです。前者は営業利益率、後者は純利益率なんて言ったりします。
でも飛行機代って、鉄道運賃などと比べると高額だから、かなり売上高があるんじゃないかと思われると思います。実際、国内大手2社(ANAとJAL)で言うと、2018年3月期のグループ売上高は、ANAが約1.9兆円、JALが約1.3兆円もあるんです。だから利益も相当な額だなぁ、なんて思ったら大間違い。同期の営業利益はANAが約1,600億円、JALが1,700億円でした。率にすると、それぞれ8.4%と13%です。JALはまぁまぁな数字だなと思うかもしれませんが、過去を見て下さい。破産前はずっと5%を超えられませんでした(再生後は企業努力して利益率を上げてきましたが)。
ANAとJALの営業利益率推移
売上高が○兆円規模であっても、本業(主に航空機を飛ばして旅客や貨物収入を得ること)の儲けを示す営業利益が少なければ、普通は当期純利益も少なくなります。株主リターンの一つである配当金は当期純利益から支払われますので、ここにいくら残っているかがポイントといえます。とはいえ、営業利益は少ないのに純利益が多い場合(営業利益<純利益)は、特別な事情があるか、財テクを駆使していると見るべきです。営業利益≧純利益くらいがちょうどよいのです。

利益率が低い理由は高コスト
でも何故利益率が低いのでしょう?
一言でいえば、コストが掛かりすぎるからです。
航空業界は、労働集約型の産業です。航空機を飛ばすためにたくさんの人員が必要になるのです。航空会社の生命線はネットワークです。いろんな空港に拠点を置いて路線を維持・拡大します。そのためには各拠点・空港に人員を配置する必要があります。また航空機内の乗務員も機材の大きさや型によって、最低の必要人数が決まっています。ダイヤ通りに航空機を飛ばすことが、航空会社の使命ですので、座席が全て埋まっていなくても乗務員を必要数確保し、地上の人員を配置しなければならないのです。
最近では空港の手続き業務を機械化するようになっており、少しずつではありますが、人に頼らないオペレーションに変わりつつありますが。

航空会社は毎年莫大な設備投資を必要とします。航空機の耐用年数は大体20年と言われていて、大手航空会社では毎年数機を売却し、1機あたり数百億円する機材を買い入れています。
機材の購入以外にも、機内の仕様(主に座席)変更やシステム改修、乗務員の訓練・育成にも投資が必要で、利益を圧迫する要因の一つです。ANAは2018年3月期は前期比1,298億円増加して、3,244憶円の投資を実施しています。
設備投資が莫大だと、それだけ株主資本を毀損するということを忘れてはなりません。

外的要因(リスク)
航空会社が儲からない要因として、様々な外的要因もあります。

原油価格の変動リスク・・・航空機燃料は原油精製品であるため、原油価格の変動に連動して変動する傾向があります。ANAは毎年3,000憶円前後を燃油費・燃料税として支出しています(前年度は営業費用の19%)
為替変動によるリスク・・・航空機燃料の購入はその多くを外貨建てで行っているため、為替変動による影響は大きくなります。
国際情勢などの影響によるリスク・・・国際線を運航している航空会社は、就航先(外地)の政治・経済・天候・疫病などの状況に影響を受けます。
競争環境のリスク・・・国内線では主要な航空会社やLCCや他交通機関などと中長距離路線にて事業内容が競合します。国際線では世界の航空会社と競合関係にあります。
公租公課などにかかわるリスク・・・着陸料などの空港使用料は各国政府の政策に依存しています。ANAは毎年1,000億円前後の空港使用料として支出しています(前年度は1,224億円=営業費用の7.7%)。

以上のような外的な要因(リスク)が存在しています。これらは、自社の努力だけでは完全には払しょくできないものばかりです。航空会社はその事業特性から、外部環境に大きく影響を受けると言えるでしょう。

経営破たんの実例
実際、過去には多くの航空会社が自助努力では再生できずに、経営破たんしています。
主なところでは、国内において2010年にJAL(会社更生法適用)、2015年にはスカイマーク(民事再生法適用)しています。JALの場合は2008年のリーマン・ショック以降の経営不振と債務超過が主因でした。スカイマークの場合は、経営不振の折り、航空機メーカー・エアバスとの機材購入に関するトラブルから多額の違約金が発生し、事業継続に疑義が生じたことが主因です。

米国では、90年代に入り規制緩和が進むと、パンアメリカン航空が連邦倒産法11章を申請しました。その後もアメリカン、ユナイテッド、デルタ、ノースウェスト、USエアーの大手全てが同法を申請し、経営破たんを経験しています。

イタリアのアリタリア航空も2000年代に一度経営破たんしています。その後2014年エティハド航空の傘下に入ったものの経営不振は続き、再度破たんしてしまいました。

航空会社はその事業構造から、収益性が乏しいのが特徴です。華々しい業界に見えますが、それは旅客として、または従業員として見た場合でしょう。会社の所有者である株主からしたら、危なっかしい投資先にしか見えません。
著名投資家のウォーレン・バフェットはかつて航空会社への投資についてこのように表明していました。
「安定して大きな利益を出す公益企業と違い、航空会社は急成長をするが、その成長を支えるために莫大な資本投下を必要とするため、利益が非常に小さくなるか、あるいは全くなくなってしまう」
投資先が数度破たんしたことを踏まえてこうも述べました。

航空業界はもう懲りた」

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