昔々、あるところに3人の兄弟がいました。3人はそれぞれの資産運用を行うにあたって、自分自身のポートフォリオを構築し始めました。
一番上のお兄さんは、手っ取り早く資産を築きたいと考えていました。そのためハイテク銘柄中心のグロース株に手元資金を一括で投資し、ポートフォリオを形成しました。時はハイテク株ブームで、購入した銘柄の株価はうなぎ上り。このまま永遠に上がり続けるだろうと誰もが信じて疑いません。
二番目のお兄さんは、一番上のお兄さん同様に少しでも早く資産を築きたいと考えてた一方で、定期的にお小遣いももらいたいと考えました。そのため、利回りのよい新興国債券を組み入れた毎月分配型投資信託を一括で購入しました。世界経済は、その中心が西欧から東にシフトしていく過程です。これまで遅れを取っていた地域覇権国が、その人口規模と安い労働力を惜しみなく生産と消費に振り向け、急成長を遂げています。先進国もそんな新興国に資金を振り向けており、新興国の通貨もかつてない水準まで高騰しています。
三番目の弟は、2人のお兄さんたちに比べて運用できる時間が長く取れそうだったので、じっくり投資戦略を練りました。そして高配当で連続増配している優良株10銘柄ほどに積み立て投資を始めることにしたのです。毎月決まった日に機械的に一定額を買い増して行くという単純な作業を淡々とこなし、着実に資産額を増やしていきました。更に定期的に配当金を受け取ると、口座から引き出すこともなく、必ず再投資していくのでした。
一番目のお兄さんは、ハイテク株に一括投資して、ポートフォリオを完成させました。
二番目のお兄さんは、新興国債券の毎月分配型投資信託に一括投資して、ポートフォリオを完成させました。
三番目の弟は、高配当・連続増配の優良株に積み立て投資していますが、まだポートフォリオは完成していません。
ある時、株式市場に暴風雨が吹き荒れ、株価は歴史的な暴落を記録しました。その影響で先進国は新興国から資金を引き上げ、世界中で景気が低迷し、新興国での生産が一気に落ち込みました。
株式市場の暴落を受けて、一番目のお兄さんのポートフォリオはズタズタになりました。急成長していたハイテク株はボコボコに投げ売りされ、資産は吹き飛んでしまいました。一番目のお兄さんは、二番目のお兄さんに助けを求めました。
しかし、新興国債券を組み入れた投信を保有していた二番目のお兄さんも、ほとんど同様です。経済が停滞すれば、新興国の債券と言えども安心はできません。しかもこれまで毎月受け取っていた分配金は、再投資されずお小遣いとして使ってしまっていたので、元本割れは必至です。目先の利益に惑わされ、投信の分配金は元本の取り崩しだということを忘れていました。
二人は三番の弟に助けを求めるしかありません。
三番目の弟のポートフォリオも株価暴落の影響は避けられませんでした。しかし、他二人のお兄さんとは違い、賢明にも連続増配の優良株を選び、銘柄と時期の分散投資を心掛けてコツコツ積み立てていたために、ポートフォリオの土台がしっかりしていました。おかげで資産が吹き飛ぶことはなく、ポートフォリオからしっかりと収益を上げています。そして一番大きかったのは、受け取ってた配当金を愚直に再投資し続けて、元本を増やしおいたことでした。
二人のお兄さんは、弟のポートフォリオに助けられ、何とかその危機を乗り越えることができましたとさ。
コメント